・手
離せなくなりそうで、躊躇った。
だけど、最後に…触れておきたかった。
寝顔の横に投げ出された、ほっそりとした白い手。
ゆるく握られた小さな拳を両手でそっと覆えば
そこから伝わる体温が、俺の決心を鈍らせる。
ごめん。でも俺、行くよ。
もう傍にいられないんだ。
俺の手はもう君を守れないから。
俺が死んでも泣かないで。
俺を想って、泣いて。
俺を、恨んで。
ずっと、好きでいて。
「……っ」
さあ早く、と急き立てるように左腕が疼いた。
細い指に軽く当てた唇から漏れる苦痛の呻きが、彼女の眠りを覚まさないうちに。
そっと、彼女の手を解放して。
静かに、立ち上がって。
背を向けて。
さよなら、ティファ。
せめて、その手のぬくもりに包まれながら死にたい、と
この期に及んで願ってしまう愚かな俺を、どうか
忘れないで。
・身長差
もう少し高かったらなってあなたが思ってるの、知ってる。
でも、私にはちょうど良いの。
ちょっとだけ顎を上げれば、あなたの唇に触れられる。
抱きしめられたら、重なる頬。耳をくすぐる溜め息。
好き
俺も、好きだよ
耳元で甘く囁き合えば、幸せで思考が麻痺しそう。
身長差、5センチ。
ねえ、理想的だと思わない?